その手に触れたくて


Γ…美月?」


通話ボタンを押してすぐ耳に当てると沈んだ夏美の声が耳に届いた。


Γ…うん」

Γ…美月…大丈夫?隼人、入院してんだってね」

Γ…うん」


夏美の声は心配しているような戸惑っているような声だった。


Γナオから聞いたよ。夜にね、ナオが隼人に電話したんだって」

Γ……」

Γそれじゃあ女の人が出てね、…ほら響さんの幼なじみの凛さんだっけ?その人が出てね、それで知ったんだって」

Γ…うん」

Γナオ、明け方病院行ったみたいだけど会えなかったんだって」

Γ……」

Γ美月…大丈夫?」

Γ…うん」

Γいつでもいいからさ、また学校に来なよ。待ってるから」

Γ…うん」


夏美だけが一人で話してる感じで、あたしの口からは“うん”しか出なかった。

学校になんて行く気にもなれない。それに制服だって――…

ビニール袋に詰め込んだ制服に視線を移し、あたしはそれと鞄を持って部屋を出た。


出てすぐリビングに向かい、その隣にある居間に入って、あたしは必要な物を引き出しから取り出して鞄に詰め込み家を出た。