その手に触れたくて


お兄ちゃんと言い合う事も話す事さえ疲れたあたしは何も言わずにお兄ちゃんに背を向けてリビングを後にした。

自分の部屋まで駆け上がり、部屋に入ってすぐあたしは制服を脱ぎ捨ててスエットに着替え、そのままベッドにバタン…と倒れ込んだ。


布団の中に潜り込んで目を閉じると、さっきまでの出来事が頭の中を駆け巡り怖くなってきた。


隼人、どうしてるんだろ…。大丈夫なのかな?

会いたい…
会って隼人の顔が見たい。


思う事は隼人の事ばかりで結局、外が明るくなるまで一睡も出来なかった。




Γ…美月、開けるわよ」


今が何時なのかは分からないけどママはそう言ってドアをコンコンとノックした。

だけどあたしは何も返事せずに布団に潜り込む。


Γ美月、開けるよ?」


再度そう言ったママはドアを開け言葉を続けた。


Γ夜中…響と何かあった?ママの居る部屋まで2人の怒鳴り声が聞こえてたよ?」

Γ……」

Γ…ママお仕事行くけど美月、朝ご飯どうする?」

Γ……」

Γテーブルにサンドイッチ置いてるから食べたくなったら食べてね」


そうママはあたしが起きている事を知ってか、独り言の様に話してた。

ママが出て行った後、あたしは布団から顔を出す。出した途端、あたしの口から深いため息が漏れた。