その手に触れたくて


小さく呟いたお兄ちゃんの声は壊れそうなほど小さくて、聞き取りにくかった。


だけど、その小さな声を聞き取ったあたしの眉に、また新しくシワが入り込んだ。


幸せになんてなれねぇ。ってどう言う意味?何でそれをまたお兄ちゃんが決めつけんの?

ほんっといい加減にしてほしい。もう、お兄ちゃんの話しに付き合うのはうんざりする。


Γさっきから言いたい放題言ってるけど、お兄ちゃんだって人の事言えないでしょ?お兄ちゃんだって隼人と同じ道を辿ってきたじゃん!!」

Γ……」

Γお父さんが居なくなったからお兄ちゃん変わったけどさ、もし今でもお父さんが居たらお兄ちゃん改善なんて出来てないよ?お兄ちゃんが言う頑固なお父さんだから、そんなお父さんが居たら今でもお兄ちゃんは改善してないよ!!」

Γだから言ってんだろうが!!」


あたしの次々と発する言葉にお兄ちゃんはまたキレたのか、あたしに勢い良く突っ掛かってくる。


Γだからって何?」


そう問い掛けるあたしに、


Γ俺と同じ道だから言ってんだろうが!!」


“美優の事、忘れたのかよ!!”


そう付け加えられた様にお兄ちゃんが叫んだ美優さんの名前にあたしの身体が強張った。