その手に触れたくて


Γそんな情報、いくらでも入る」


そう言ったお兄ちゃんはまた新しいタバコに火を点ける。

だからと言って、何であたしが隼人と別れなくちゃいけないの?

それは過去でしょ?例えそれが今の隼人だとしても、あたしは隼人と別れない。

一度好きになった人をそう簡単に手放したくはない。

隼人の事、色々言ってるけどお兄ちゃんだって人の事言えないじゃん――…


Γ…だからって、あたしは別れない」


きっぱりと別れない宣言をしたあたしにお兄ちゃんの鋭い視線があたしを突き刺す。


Γお前…、聞いてなかったのか?アイツと居たらロクな事ねぇって言っただろ」

Γそれはお兄ちゃんが思ってるだけじゃん!!」

Γだったらお前の手首にある跡は何の跡だ」


お兄ちゃんの視線があたしの左手首にスッと落ちた瞬間、嫌な汗が背中を走った。

思わず言葉を失うあたしに、


Γ俺が気付いてねぇとでも思ったか?お前が根性焼きなんてするわけねぇしな。どうせアイツの周りにいる奴らにやられたんだろ」


見事、正解であろう言葉を発したお兄ちゃんはあたしをチラッと見た後、視線を下に落とした。


そして小さく呟く。


Γアイツと居たら幸せになんてなれねぇ…」