その手に触れたくて


一度、立ち上がったお兄ちゃんはもう一度、腰を下ろし髪をグシャっと乱暴に掻乱し深いため息を溢す。


Γアンパンて分かるか?」


暫くして、お兄ちゃんはトーンを落として小さく呟いた。


Γ…何?」

Γ要するにシンナーだ。それをアイツはやってる」

Γ……」

Γまぁ、それだけじゃねぇけど。タイマン、ソウマンなんてしょっちゅうだ」

Γ……」

Γネンショーにだって行きかけた事だってある。アイツはそう言う男だ」


お兄ちゃんがスラスラと言ってきた言葉は耳によく入り込んだのに…なのに…、その意味の理解があたしには出来なかった。


シンナーだって分かる。タイマン、ソウマンの意味だって分かる。ネンショー…

少年院…。


言葉の意味は分かってんだけど、隼人がそう言う男と言うのだけ、あたしには理解出来なかった。


だから――…


Γ何でそんな事、お兄ちゃんが知ってんの?」


思ったままの事をあたしは恐る恐る口から吐き出した。