その手に触れたくて


Γ俺が言わなかったら誰が言う。もし今ここに親父が居たら確実に反対する。あの頑固な親父がお前を放っておくわけがねぇ」

Γだからって何でお兄ちゃんに言われなきゃなんないの?あたしのお父さんはお兄ちゃんなんかじゃない!!隼人の事、何も知らないのに悪口言わないでよ!!」

Γなんも分かってねぇのはお前だろうが!!」


バンっと机を叩きつけたお兄ちゃんは勢いよく立ち上がり、鋭い目付きであたしを見下ろした。

その身構えてくるお兄ちゃんの目付きに、あたしの目が潤み始める。


最後に吐き出したお兄ちゃんの言葉にあたしの口は開く事はなくただ唇を噛み締めたままお兄ちゃんの続けていく言葉に耳を傾けるままだった。


Γお前…、アイツの何を知ってんだ?」

Γ……」

Γアイツの過去も今も知ってんのかよ。何も知らねぇのにグタグタ言ってんじゃねぇよ」

Γ……」


隼人の過去…?って何だろう。そう言えば隼人が昔何してたのとか、そんなの知らない。

今だって顔にアザを作って来るだけで、そんなお兄ちゃんが怒るほど隼人が悪い事をしている様には思えない。


それにお兄ちゃんと隼人の関係だって知らないし…、今のあたしはお兄ちゃんとの会話に着いていく事が出来なかった。