この後、これからどうしようかなんて考える気力もなかった。
ただ思うにはお兄ちゃんとは帰りたくないって事くらい。
隼人の傍に寄り添っていたいけど、今日はそれが出来そうにない。
だから、
Γ凛さん…」
あたしは隣で手を洗っている凛さんに小さく呟いた。
Γえ、ん?どうしたの?しんどい?」
そう言って凛さんは水を止め、あたしの顔を覗き込んだ。
しんどいと言う言葉に首を振り、あたしはゆっくりと口を開く。
Γあの…。今日…凛さんちに泊まってもいいですか?」
そう言ったあたしは鏡越しから凛さんを見つめる。だけど凛さんは少し顔を歪ませ首を傾げた。
Γあたしはいいんだけど…。ほら、あの…響が何て言うか」
Γ……」
こんな時まで凛さんはお兄ちゃんを気にする。でも、まぁ…幼なじみである凛さんは小さい頃からいつもお兄ちゃんと居たから、お兄ちゃんの機嫌も態度も全てわかり尽くしている。
だから、この状況からして迷うのは当たり前なのかも知れない。
Γあ、でも言うだけ響に言ってみるね」
凛さんは困った顔をしながらも優しく微笑んでくれて、それが何だか凄く申し訳ない気持ちになった。



