無我夢中で少し走って、これ以上あたしの息がもたないと思うと、あたしは荒れた息とともに立ち止まり後ろを振り返った。

暗闇の中から人が来ることも追い掛けてくる事もないと思ったあたしは、隼人の宣言を無視して来た道をまた少しずつ戻って行った。

自分の身を隠しながら、隼人の事が心配で目から熱い涙が走るのを手で拭い隼人の傍まで近付こうとした。

歩く歩道の横に繋がる道路から、何台か走り去って行く車のライトが自棄に眩しく感じる。

12月半ばの気温は自棄に冷たくて怖さとともに、よりいっそう身体が冷たかった。


空き地に近づくたびに聞こえてくる声。荒れた声。張り裂けんだ声。誰が誰かの声だとか、それさえも、もう分からなくなってた。


足を止めて、その声に耳をジッと傾けて隼人の声を探そうとしていたけど隼人の声は全く聞こえなくて、ただ聞こえるのは知らない男達の声だけだった。


どうしたの、隼人…
ねぇ、隼人いるの?


そう思いながら、あたしの足は勝手に進んでいて気付けば空き地の目の前まで引き戻していた。

そこから見える風景。薄暗い中、見えるのは誰かを数人で取り囲んでその倒れている誰かを蹴り倒している。




その誰かと言うのは…




隼人だった。