Γおーい、橘ぁ…逃げてんじゃねぇよ」
Γラッキー、女も一緒じゃねぇかよ」
Γお前、女襲うの得意だから襲えよ。なおさらアイツの女ならラッキーじゃん」
数人の男達の声と笑い声。だんだん近づいてくる足音。その人影にあたしの身体は強張ってきた。
Γ行け、美月」
隼人にこれ以上困らせたくないあたしはゆっくりと足を進ませ数歩進んだ後、ゆっくりと振り返った。
Γ…隼人」
振り返った先にはまだ隼人が居て、隼人はあたしをジッと見つめてた。
だけど男達が空き地に入って来た時、
Γ走れ!!」
隼人の張り裂けんだ声が辺りを響かせた。
もう無我夢中で何が何だか分からなかった。隼人に言われた通り、あたしの足は勝手に進んでた。
背後から聞こえるΓ女、追えよ」と言う見知らぬ男の声に変な汗が走ってた。
だけど――…
Γおい、こらぁ!!てめぇの相手はそっちじゃねぇだろうが!!」
一瞬、聞き間違えたのかと思うほどの隼人の怒鳴り声が辺りを響かせた。
恐かった。あんな隼人の怒鳴った声を聞いたのが恐かった。
今までとは違う隼人の怒鳴り声と、今から何が起ころうとする想像をするのが怖くて怖くてたまらなかった。



