その手に触れたくて


「おー、夏美どした?」


そう言ってきたのは、あたしが教科書を貸した男だった。


この人が隼人って人か…


両膝を立ててフェンスに背を付けたまま、あたし達を見上げてくる。

その威圧感にまたゾっとした。


「あのさ美月を見て何か思い出さない?」


夏美の後ろに隠れてたあたしの腕を夏美は軽く前に引っ張る。

その所為で一気に男達の視線があたしに突き刺さった。


「え、何が?」


案の定、隼人はあたしに教科書を借りた事すら忘れてるみたいで横に居る夏美の口から大きなため息が聞こえた。


「何?隼人なんかしたのかよ」

「いや…、知らね。」


えぇっ!!知らね…って…
思わずあたしは拍子抜けしてしまう。


隼人の前に居た直司は缶コーヒーを口に含みながら、あたしを見つめた。


そして軽く目が合った時、


「あっ、確か俺と同じクラスだよな?たまに夏美と居る所、見るわ」


そう言って直司はあたしと夏美を交互に見た。

たまにっていつも一緒にいるし…、ただそれはあなたが学校に居ないから分からないだけで…