その手に触れたくて


硬直するあたしの身体にくらべ、唇だけは温かさがある。

目のすぐ前には隼人の顔があって、隼人はあたしの唇を塞いでいる。


何がどうなってんのか分かんない。

あたしは今、隼人にキスされている。分かんない分かんない…


だけど抵抗する事もなく、隼人はあたしの唇からゆっくり離した。


「美月…目閉じろよ」


そう言われて、あたしは言われるがまま目を閉じた。

だめだって分かってんのに目が勝手に閉じてしまった。

催眠術にでもかかったのかと思ったくらい簡単に目が閉じてしまった。


目を閉じて、もう一度隼人の唇があたしの唇と重なる。

されるがままにって感じで隼人は角度をかえながら、あたしの唇を奪っていく。

あまりに激しさに息苦しくなった、あたしは微かに口を開き、そこから空気をいれようと思った瞬間、生温かい何かがあたしの口の中に入りビクンと身体が震えた。

それが隼人の舌って事が分かったのは数秒もかからない程度で、あたしの頭の中はぼんやりとしていく。


否定するって事は頭の片隅にもなくて、左手で後頭部を抑えられている所為で身動きすら出来ない。


口内で激しく動く隼人の舌に、ただただ身を任せるって感じだった。