その手に触れたくて


おかしいのかもしんない。こんなに意識する自分はおかしいのかもしんない。

だけど不審なあたしを悟られたくないあたしは、見てもいない雑誌だけはきちんと捲っていく。


「なぁ」


暫く経ってから、隼人は見ていた雑誌をパタンと閉じ低い声を出した。

雑誌からゆっくり目を隼人に向けるとタバコを銜えたまま真っ直ぐ前を見ていて、


「初めの続き」


そう言ってタバコの煙を吐き出した。


「えっ?」


何がなんだか分からないあたしは小さく声を出し、隼人を見つめる。


「お前さ、なんで俺の事、避けてんの?」


もう一度タバコを銜えた隼人はあたしの方を向き、目が合った瞬間ゆっくりあたしは隼人から目を逸らした。


「また避けんの?」

「そう言う訳じゃ…」


あまり避け続けて嫌われたくないと思ったあたしは、呟きながら隼人に顔を向けると一瞬にして何かが唇に触れた。