その手に触れたくて


彼女のやつだったら絶対に読んでない。

彼女のやつを読んでいるって事だけで、なんか嫌気が刺すから。


だけどほんとに夏美のなのか疑いが止まらないあたしは、


「何で夏美のがあるの?」


隼人に問いかけた。


「颯太んちに行く時に重いって言うから俺の鞄に入れてた。っていっても結局雑誌のこと自体忘れて、俺が家まで持って帰ってきた」

「へぇ〜…」


ここまで聞くあたしってどうにかしているのかもしんない。

たかが雑誌如きに…。誰のでもいいのに、聞くあたしは相当隼人を意識してんのかもしんない。

ううん。しんないじゃなくて、してるんだと思う。


あたしは腰を下ろして手に持っている雑誌をパラパラと捲って見る。

だけど数分経っても隼人との会話なんてまったくなく、あたしから何話したらいいのか分からないまま30分以上は過ぎた。


パラパラと雑誌を捲る音。だけど雑誌なんか全然見ていなくて、意識をしているのは右隣にいる隼人の方。

カチッとライターで火を点ける音にも敏感に意識がそっちにいって、少し隼人が咳払いすると隼人に目がいってしまう。