* * *

「もしもし…雅樹…?」

「おう。どうした?」

「あのさ…ゴホッ…俺…ちょっと風邪ひいちゃって…ゴホッ…」

「なんだその嘘くさい咳は?」

「え…!?」

「で?用件は何だ?」

「俺の代わりに、ピアノを弾きに行ってほしいんだ。
朝倉プリンスホテルに。」

「朝倉…プリンスホテル…?」

「クリスマスパーティでのBGM代わりに生演奏をするバイトがあって…
つーか、俺風邪ひいたってことでもう連絡入れちゃって、川島雅樹が行きますって言っちゃったから。
場所分かるだろ!?
じゃ、よろしくな!!」

「え!?あ…おいちょっと!!」



無情にも電話は切れた…。
俺の耳には機械音だけが残る。