コンサートホールの近くにあった、芝生の綺麗な人気のない場所まで連れて行った。

それでも理子の涙は止まらなかった。

俺は握っていた理子の手を無意識のうちに強く握り直していた。



「……な…んで…私…」


消え入りそうな声で理子は言った。


「ん…?どうした?」

「どうして私…
雅樹みたいに弾けないの…?」


思いがけぬ理子の質問になんて答えればよいか分からなかった。