あれはいつだったか…

泣いている理子を見たとき、この気持ちを自覚した。

確か…理子は大きな演奏会か何かで大失敗をしてしまい、舞台そでで泣いていたような気がする。

そんな姿を見ていられなくて、俺は理子の手を引いて外に連れ出した。


「雅樹…?」


泣いて、少し上ずった声でそう呼んだ。
少し不安そうな声。

それに対して俺は…


「ここじゃ泣けないだろ?」


そう言うのが精一杯だった。