私は窓枠に肘をついて、外の風景を眺めた。

灰色の空のした。

緑の藪が途切れるたびに、工場が見える。
モクモクと立ち上る煙は、そのまま空に繋がっている。
このあたりは鉄鋼の名産地なのだ。
工場の奥に、白い影のような山脈がある。

私には妻も子供もいないので、気楽なひとり旅が出来るのだ。

いやはや、喜んでよいものか。

車内に視線を移した。

木貼りのタイルによる通路。
茶色いフカフカの革のシート。
窓枠には、チェックのカーテンが掛けられている。

この車両には、私以外に乗客はいないようだ。