部屋に戻った花音は家に母がいない事にホッとした。


「涙が枯れるまで泣いちゃうんだからっ!」




花音は本当に涙が出なくなるまで泣いた。



* * * * * *




「カイトさん?カイトさん?」


ぼんやりとしているカイトにヒロは何度も呼んだ。



「カイトさん?」


「えっ?あぁ・・・ヒロ 何の用だ?」


事務所の机を挟んだ向こう側にヒロが立っていた。


何度呼んでもぼんやりしているカイトが心配になる。



「いえ、お客様は全員お帰りになりました」


「もうそんな時間か・・・・お疲れ様 もう帰っていいよ」


「どうかしたんですか?」


「いや、なんでもないよ」


そう言うとまたカイトは遠い目でぼんやりし始めてしまった。