「えーっ!すぐに来てくれないのぉ?」


唇を尖らせてカイトに言う。



男なら誰が見てもきれいだと思う香帆がキスをねだるように唇を尖らせればすぐに奪いたくなるだろう。



カイトは香帆を大事なお得意様としか見ていない。



失礼の無いようにカイトは香帆をテーブルに届けると、そこに付いていたホストに頼み自分は小夜子のテーブルへ行った。





小夜子は事務所を出てからのカイトをじっと見つめていた。


真っ直ぐ自分のテーブルに来るかと思われたのだが、いかにもお金持ちのお嬢様と言った女性が通路に立ちカイトに何か話をしている。


カイトの笑みを見て胸がツキッと痛む。


――あたしはこういうカイトを見るのが嫌だったんだよね・・・。


それは今も変わらない。



だがそれが原因で別れ、小夜子がもう一度カイトと付き合うのならば見てみぬ振りをしなければならないのだ。