月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

「あ、そうだ。頼まれたこと調べといたわよ」

あたしは手帳を取り出した。

「聞かせてくれ」

達郎はポー全集を本棚に戻した。

「まず引っ越しの件からだけど『ルノワール』の店長が店の近くでいい物件ないかと相談を受けていたわ」

「不動産屋の方は?」

「このマンション仲介した不動産屋にあたってみたけど、引っ越しの相談はされてないそうよ」

達郎はあたしの話にうなずきながら本棚の横・フローリングの床の上に直に積まれていた雑誌の束に目をやった。

その大半は女性誌や文芸誌だったが、達郎はその中から一冊の本を抜き出した。

手にしたそれは不動産情報誌だった。

「吉原しのぶが引っ越しを考えていたのは事実のようだな」

「でもどうしてかしら」

あたしは首をかしげた。

「このマンションは横倉に買ってもらったものでしょう?それなのに引っ越すなんて」

「風水だな」

達郎は真剣な顔でつぶやいた。