月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

「しかしこんだけ読んでいれば、あれぐらいの言い回し思いつくかもな」

「あれぐらいの言い回しって?」

「小山洋子が言ってた事だよ」

そう言いながら達郎は、『ポー怪奇全集』という題名の本を手に取った。

「小山洋子の言ってた事って…七色の血が云々って話?」

「そうだ」

「まぁ確かに普通じゃ出てこないセリフだよね」

若いのに男のあしらいが巧み―吉原しのぶを「エアリアル」の社長はそう評したが、その土台は文学にあったワケだ。

でも東や横倉から聞いた夢のエピソードに関しては正直、閉口だ。

男あしらいが巧みな、奔放な夜の蝶のイメージと重ねると、えらく退廃的な印象を受ける。

人は本を読みすぎるとあんな妄想を抱くようになってしまうのか。

あたしはポー全集のページをめくる達郎を眺めた。

うーん…ひょっとしたらコイツも…。

「オレは妙な夢はみたりしないぞ」

「べ、別にそう決めつけたワケじゃ…」