月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

公園で小林巡査と別れた後、あたしたちは吉原しのぶの住んでいたマンションを訪れた。

暗証番号つきの、このあたりでは一番の高級マンション。

部屋には一人暮らしには充分すぎるほどの家具や調度品がそろっていた。

「3LDKに一人暮らしって正直どうかね」

達郎は首をかしげた。

あたしもそう思ったが、実際のところ横倉は毎週訪れてたワケだから、それなりの部屋を与えてしかるべきだろう。

リビングに足を向けるとふたつ並んだ白い大きな本棚があたしたちの目をひいた。

「吉原しのぶが文学少女だったのはホントみたいだな」

達郎は新刊本や文庫本がみっしり詰まった本棚を眺めた。

「ボードレールにランボー、モリエール、ジイド、プルーストにジョイス、カミュにカフカ…稲垣足穂に澁澤龍彦か」

「有名な人たちなの?」

文学との接点は国語の授業以来まったくないあたしに達郎は

「別に知らなくても生きていける」

と、ありがたい言葉をくれた。