月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

「どうしたんだい?」

怪訝に思った横倉はしのぶの顔をのぞきこんだ。

だがしのぶは薄闇の中でほほ笑みを浮かべただけだった。

「なんでもない」

そう言って胸に顔をうずめてきた。

横倉はそんな彼女をたまらないほど愛しく思った。

彼は前から言おうとしていた事を口にする決意を固めた。

「なぁ、しのぶ」

声と同じぐらい、優しく彼女の頭を撫でる。

なに?と問い返してきたしのぶの顔をじっと見つめた。

「しのぶ、僕と結婚してくれないか?」

沈黙が闇に漂った。

こちらを見つめ返すしのぶの顔には、何もなかった。

喜びも驚きもない、まったくの無表情。

やがてしのぶは

「本気なの?」

と言って眉をひそめた。

口もとには薄い笑みが浮かんでいる。

月明りの下、その表情は悲しげに見えた。

「もちろん本気だ」

横倉は強い口調で言い切った。