月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

しのぶの新たな魅力に気付いたのか、月光の魔力か、はたまた夜の闇が生み出したものか。

そのどれともつかない、不思議な感情に支配されながら、横倉はゆっくりと指先を伸ばした。

ゆっくり。

すごくゆっくり。

まるで初めて触れるかのように。

ようやくその白い首筋に指先が触れた時、横倉は「暖かい」と思った。

人の体なのだからそれは当たり前なのだが、この時はしのぶの肌を「白く美しいもの」と認識していただけだったからかもしれない。

横倉はそのまましのぶの美しい首筋を指でなぞった。

やわらかいというか、なめらかというか、そんな心地よい感触が指先に伝わる。

その時、しのぶが目を開けた。

首筋に指先をあてたままの横倉を、不思議そうな顔で見上げる。

「ごめん、起こしてしまったかい?」

横倉は我に帰り、あわてて指を引っ込めた。

しのぶは横倉が撫でた後にそっと手を触れた。

「横倉さんだったの…」

その声には失望の響きがあった。