月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

吉原しのぶの経歴は知っていたけど、成績優秀だったとは初耳だ。

「彼女は文学に興味をもってましてね。大学に行けてたらぜひ文学を学びたかったと言ってました」

それでボードレールか。

メモをとりながらふと顔をあげると、達郎がこちらを見ていた。

少し眉をひそめ、不満げな顔をしている。

察するに、吉原しのぶが文学少女だったことをなぜ知らなかったと言いたいのだろう。

あたしだって関係者の情報をすべて把握しているわけではない。

今みたいに聞き込みをしていくうちにつかむ情報はいくらでもある。

てか、あたしゃあんたのお目付け役で精一杯じゃい!

そんな表情でにらみ返すと

「刑事さん?」

横倉が不思議そうな顔であたしを見ていた。

「あ、いえこちらのことです」

なにがこちらのことなのか言ってるあたしにもよく分からなかったが、横倉は「はぁ」と一応は納得してくれた。