月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

「わかりません。あたしは見たことないです。うちのお店はお客さんの年齢層高いから若い人くれば目立つはずですけど」

そう言われ、あたしは店内を見回した。

なるほど、企業の重役クラスにいそうな顔があちこちに見受けられる。

「吉原さんめあてで通われてたお客さんはいるんですか」

達郎の質問に洋子はうなずいた。

「常連さんは何人かいましたけど、一番熱心だったのは横倉さんかしら」

「横倉さん、ですか」

「ええ。ジム経営してる社長さんなんですけど…あっ」

洋子が何かに気付いた。

「あそこにいる人が横倉さんです」

洋子の視線を追うと、芥子色のスーツを着た男性が店の入口で黒服の出迎えを受けていた。

洋子によると男性の名は横倉芳嗣で年齢は38才。

しのぶと洋子が入店したころからの常連の客だそうだ。

これは話を訊く必要があるなと思っていたら、向こうの方からあたしたちのいるテーブルにやって来た。