月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

確かに。あたしもその場にいたら同じ反応を示すだろう。

『エアリアル』の社長が言ってたのはこのことかしら。

「吉原さんは普段からそういう言動が多かったんですか」

あたしは東久志の証言を意識しながら訊いた。

「普段はそうでもなかったです。しつこいお客さんに言い寄られた時なんかに、詩みたいなのを口ずさんでポカンとさせたりはしてましたけど」

残念ながら?東久志が語った夢の話は関連なさそうだ。

「詩というとどんなものでしたか?」

達郎の問い掛けに洋子は記憶の糸をたぐる表情をみせた。

「しのぶはボードレールとかいう人の詩をアレンジしてみたって言ってました」

「へぇ、ボードレールですか」

「探偵さんはボードレールを知ってるんですか」

達郎の反応に洋子が食いついた。

「ボードレールはフランスの有名な詩人で、エドガー・アラン・ポーを高く評価してたことでも知られてます」