月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る

これは東を乗せたタクシーの運転手からはっきりとした証言を得ている。

乗車記録にもその旨が記されていた。

「刑事さん、やはり僕が疑われているんですかね?」

東の問い掛けにあたしは首を振った。

「いま東さんにお話をうかがってるのはあくまで事件解決の参考にするためです」

我ながら白々しいと思ったが、捜査の守秘義務というやつだ。

それに対して東は苦笑いを浮かべた。

「聞きましたよ。しのぶさんの死体を見つけたお巡りさんが、公園から逃げ去る男を見たそうですね」

知っていたか。

取り調べの時に捜査員の誰かが東の動揺を誘おうと喋ったんだろう。

「金髪で白いジャケット姿だったそうで。トレードマークが僕と一緒だ」

東は金色に染めた髪を指先でいじった。

彼が普段から白いジャケットを愛用しているという証言も複数から得ていた。

そして昨夜も白いジャケットを羽織っていたことも。

「でも僕は犯人じゃありませんよ」

東は言い切った。