「なに!?誰だてめぇらは……はぶぅっ!!」

ノブは拳を振り払い再び、今度は横から邪魔をしてきたその男に殴りかかろうとした。

しかし、その瞬間。

ノブは左の頬が潰されたのではないか?と思うほどの痛みを感じながら、自らの身長分ほど吹っ飛ばされてしまった。

「誰だてめぇらはってか?そうさ、ヒーロー見参!!」

ノブを吹き飛ばしたのは杉宮とよく似た顔をした、作業服の青年だった。

何だかチャラけかたまでそっくりである。

そしてノブの拳を受けとめていた男は、鴨居を押さえ付けていた大悟を軽がると引き剥がし、地面に叩きつける。

「カモ……遅くなって悪かったな。後は俺等に任しとけ。」

大悟を吹き飛ばしたのは鴨居が助けに来てほしくて仕方なかった杉宮であった。

鴨居の頭の中に浮かび、どんなに振り払っても消えなかった笑顔がそこにあった。

どれだけ安心したことだろう。鴨居は全身から力が抜け、その場に崩れる様に座り込んだ。

「さぁてと。ちゃっちゃと片付けるか要。」

「おう。手加減しろよな……樹(いつき)。」

樹ははめていた軍手を歯で剥がし取ると、地面に捨てる。

その手の甲は、無数の傷ができていた。

「手加減だ?はっ……教わったこともねぇよ!!」