『トモ君。お久しぶりです。手紙なんて初めて書きます。
トモ君は優しくて、人付き合いがよくて、何より笑顔が凄く可愛いの。
そんなトモ君のことを私が好きになったのは偶然なんかじゃないって今でも思うんだ。』

鴨居は一字一句を見逃さないように、ゆっくりと手紙に目を通す。

そこにはぎっしりと鴨居への思いが書かれている。

『告白した時ね、トモ君が少し悲しそうな顔をしたの覚えてる。
今思うとあれは私のこと心配してくれたんだよね?
トモ君は優しいから断らなかったけど、私への気持ちは恋愛とは違うんだってどこかで分かってた。
それでも、付き合ってから私のことを好きにさせてやる!!って思ってたのにな……恋って上手くいかないね。』

これを書いた時、真希はどんな気持ちで、どんな表情をしながら手紙を書いていたのだろうか。

鴨居の胸がぐっと痛む。


『トモ君を好きになったこと……後悔していません。それはきっとこれからもずっと。
今までありがとう。次は本当の恋をして幸せになってください。
山下真希。』

最後の方には、ところどころに斑点のシワが打っていた。

それが山下の涙であることに気付き、鴨居は本当に後悔をした。

真希をフッたことではない。

考え無しに交際を始めて、真希を深く傷付けた事にだった。

「オレ本当にバカだな……」

その場に立ち塞ぐ鴨居に気付いた店員が、心配そうに話し掛ける。

しかし鴨居の耳には真希の最後の「ありがとう」だけが、延々とこだましているのだった。