放浪カモメ


そこに居たのは大川ではなく、なんと――

「久しぶりだね…トモ君。」

鴨居の恋人、山下真希だったのだ。

「真希…何でここに?」

「……座って。」

真希に促され、鴨居は久しぶりに会う恋人の前に座る。


しばらく無言で向き合う二人。

先に話し始めたのは真希だった。


「美鈴にね。全部聞いたの……」

その言葉に鴨居は罪悪感で胃が引きちぎれそうになった。

「私がいけなかったんだよね。トモ君のこと何も知りもしないくせに付き合おう、なんて言ったから。」

「いや真希…オレは……」

その時、二人の話を遮るかのように店員が現れた。

鴨居は適当にコーヒーを頼み、店員をあしらう。

そして再び二人の間に沈黙が流れてしまう。



しかし、つぎに沈黙を破ったのは鴨居だった。

「真希ゴメン。オレ告白された時、フルのが怖かったんだ。」

真希は頷きも返事もしないで鴨居の話を受けとめようとしていた。