鴨居は二つの講義に出た後、大川との約束のファミレスに向かった。
約束の時間より早く着いてしまった鴨居は、ファミレスの手前にあった古本屋で時間を潰すことにした。
文庫本、単行本、雑誌、参考書など、手に取らずにタイトルだけを眺めているとメールが届く。
『カモ君、もう来てる?一番奥の窓側の席にいるからね。』
そのメールの送り主はアドレスで表示されていた。
つまり、鴨居の携帯に登録されていない人からということだ。
考えなくても、大川からであることは明白で鴨居はしぶしぶとファミレスへむかっていく。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
爽やかな笑顔で店員が迎えてくれたが、鴨居にはそれすらも自分を嘲笑っているように見えてしまっていた。
「いえ。先に友達が来ているんで…」
「そうですか。お席は分かりますか?」
「はい」と鴨居が答えると店員はキッチンの奥へと消えていった。
鴨居は大川からのメール通りに、一番奥の観葉植物に隠れた席へと歩いていく。
近づいていくと、長い黒髪が見えた。
「大川さん何の用なの……って、え?」
その席にいたのは鴨居の予想だにしていなかった人物。
「ま…真希?」



