六月に入り、メグの出産予定日まで二週間と迫ってきていた。

鴨居は心配で心配でいてもたってもいられず、このところ毎日の様に電話をかけていた。

「あのねぇカモ。心配してくれるのは有難いんだけど……毎日電話してくるのはどうなの?」

一番大変なはずのメグに呆れられる始末である。

「だって、やっぱり気になるし……オレに出来ることなんて電話でメグを励ましてやることくらいだし。」

ふぅ。と小さくため息をしてメグが言う。

「バカだなぁ。私は千葉でカモが頑張ってるって思うだけでたくさん力貰ってるんだよ?」

大きくなったお腹を優しく撫でると、赤ん坊が返事をしたのだろうか、お腹を蹴った様な気がした。

「という訳で、カモは必要以上に心配してないでさ。今はしっかり稼いで貰わないと。」

笑って鴨居を焚き付けるメグ。

鴨居はまるで身を引き締められるような思いだ。

「ねぇカモ。この子が大きくなって私達の手を離れるようになったらさ……また二人でいろんな場所を旅しようね。」

急にそんなことを言いだしたメグ。

鴨居はやっぱり不安なんだろうな。と思ったが。

その時はあまり気にはしていなかった。

「それで、いろんな所に行っていろんな人に出会って、沢山の写真と思い出を持ってこの子に会いに行くの。絶対楽しいよ。」

想像するだけで、本当に旅をしたかのような感覚に二人はなった。

「それじゃあ、その時までに沢山稼いでおかなきゃならないな。電車賃とかバカにならないしな。」

「うん、でも私はまた自転車旅でも良いけどね。」

「ヤダよ、疲れるもん。オレは車で行くからメグは自転車で行けば?」

そんな冗談を言い合って、二人は笑った。