佐野の結婚から月日は驚くほど早く流れ、春。

鴨居は大阪のメグの家を久しぶりに訪れていた。

約半年ぶりの訪問。

「あら、早かったのね。今メグとパパで買い物行ってるの、すぐ戻ってくると思うしミルクティーでも飲んで待ちましょ。」

いつかの厳しさはなく、養母は暖かく鴨居を迎え入れる。

リビングのふかふかのソファーに座ると、養母が二人分のミルクティーを運んできた。

「どう?頑張れてるの?」

千葉での生活を気に掛けてくれていた様で、鴨居は素直に嬉しかった。

「ぼちぼちですかね。やっと仕事の邪魔にならないようになってきたというか。」

そんな現状に、養母は一切の軽蔑の念を抱いたりはしない。

「そっか、いきなり工務店だもんね。そりゃ慣れないことをするのは楽じゃないって。」

そんな優しい言葉と少し甘いミルクティーで、鴨居の胸は温まる。



「ただいまー」と玄関から元気な声がして、メグと養父が帰ってきた。

リビングに、大きな買い物袋を持ちながら入ってきたメグ。

鴨居を見つけるなりに鴨居の胸に飛び込んだ。

「カモ。やっと会えたぁ。」

鴨居は優しくメグの髪をなでる。

そしてだいぶ大きくなったメグのお腹にそっと手を当てた。

「おっきくなったでしょ?凄い元気な子でね、たまにお腹蹴ってるのが分かるの。あれって本当だったんだね。」

鴨居の手に自分の手を重ねるメグ。

愛しそうにお腹をなでた。

「コラ、メグ。卵とか出しっぱなしよ。冷蔵庫に入れてらっしゃい。」

「はーい。」

メグは放ったらかしにしていた買い物袋を拾い上げると、キッチンに入っていった。


「まったく……久しぶりに鴨居くんに会うからってはしゃいじゃって。」

養母のぼやきで、鴨居はメグと会うのが六ヶ月以上に久しぶりなのだと思い出した。

「オレも今かなり嬉しいですよ。」

鴨居がそう言うと養母は「仕方ないか」と言って肩をすくめた。