「杉宮先輩……」
突然の再会に鴨居の心は震えていた。
紛れもない現実なのに、何度ふとももを痛いくらいにつねっても、夢にさえ思えてしまう。
しかし対照的に、いつも通りを崩さないのが杉宮という男だ。
「残念でした。今は三芝先輩な。」
そう意地悪を言って、満足そうに笑う杉宮。
こんな何でもない会話が、やりとりが二人には嬉しくて仕方がなかった。
「要さん。もうすぐ新郎新婦が出て来ますよ。」
じゃれ合う二人の横で冷静な梓、その言葉にようやく杉宮は席に座った。
「なんかしばらく見ない間に、大人っぽくなったな。」
座って、テーブルに肘をついて杉宮が言う。
マナーの悪さに呆れた。という表情の梓だが、それは許容範囲らしい、そっと肘に手をやって杉宮の姿勢を正した。
「そうですか?」
「うん。色々あって一皮向けたんだな。って感じ。」
会場はまだ騒ついていて、みんな思い思いに会話を楽しみながら新郎新婦の登場を心待ちにしていた。
懐かしいその顔は少しだけ痩せ細ってしまっているように見えた。
「先輩は……何だかやつれましたね。」
鴨居の的を射た言葉に杉宮は少し悲しそうに笑った。
「ああ……オレも色々あったから、な。」
そう言った杉宮の顔を、梓は少し哀しげに見つめていた。



