それは工務店で働きはじめてから一月が経った頃。

メグに会いに大阪に行った鴨居に養父がさせた約束。

「メグが心配なのは分かるけど。どうだろう、真理恵が本格的に出産に向け準備をしなくてはならなくなる春まで、君は1人で頑張ってみては。」

正直な所、口にはしなくとも、もうすでに養父も養母も二人のことは認めていた。

それは鴨居のひたむきな努力と誠意があったからであったし。

養父にいたってはかなり鴨居のことを気に入っていた。

「建前としては私達に誠意を見せろ。ってことなんだが、出産にはお金必要でしょ?ここまで行き来するお金があるなら少しでも多く貯めなさいな。」

養母に言われたことは言い返すことなんて到底出来ない事実で。

鴨居はモヤモヤを抱えながらも承諾せざるを得なかったのだ。

「あ、そうそう。君のおかげでね最近は私も妻もメグと頻繁に会話をするようになったよ。そしたらどうだろう、あれだけ見たくて仕方がなかったあの子の笑った顔が毎日のように見れるようになった。」

養父は本当に嬉しそうに話す。

「妻は決して口に出したりはしないだろうが、私達は君に感謝しているんだよ。だから、頑張りなさい。」

そう言われて鴨居の顔もほころんだ。