「おい新入り、さっさと材木持ってこいや!!」

「おーい鴨居くん。そこの廃材を運んでおいてくれるかな?」

「おい新入り、さっさと鉋(かんな)持ってこいってさっきから言ってんだろうが!!」

朝から工務店に飛びかう怒鳴り声。

忙しさにプラスして全く使えない奴が入ってきたことで社員達は苛立っていた。

「まったくハマさんも何でこう、使えねぇガキばっかり拾ってくるんだかな。」

鉢巻きを頭に巻いた髭面の男、坂口が葛城にぼそりと尋ねる。

「んー?何ででしょうね。たぶん、ああいう子達のこと好きなんですよあの人。」

「樹はまだマシだったけどよ……今度の奴は根性ありそうには見えないし、すぐに辞めるんじゃねぇか?」

坂口の言葉を葛城は自分の中で否定していた。

あの瞳を見たら、鴨居をそんな風に弱い若者に見たりはできない。と思っていたからだ。

「僕もあの人に拾われた身ですから何となく分かります。彼はきっと大丈夫ですよ。」

「んー。そうかねぇ……」

ぼやきながら坂口は仕事に戻る。

いろいろな所から飛び交う仕事の指示に翻弄されながらも鴨居はくじけることなく走り回っている。

そんな鴨居の様子を見て葛城が小さく笑う。

「昔の自分見てるみてぇで面白ぇだろ?」

急に現れた濱田が葛城にまるで子供の頭を撫でるようにして、ぐりぐりと頭を鷲掴みにする。

「面白がってなんかいませんよ。でも……そうですね、つまらなくはない。」

葛城から手を離すと濱田は一番聞きたかったことを口にする。

「なぁカツ。お前昨日オレのことヤクザみたいな社長とか言ってなかったか?」

濱田の地獄耳に葛城もさすがに驚いたが、見事なまでに表情を崩さずに言う。

「言ってないですよ?それよりほら、この設計図出来上がりましたよ、確認お願いしますね。」

そう言って設計図を渡し、葛城は事務所に入っていった。

残された濱田。

「んー。言ってた様な気がしたんだけどなぁ。」

しばらく濱田はその場に立ち尽くし、頭を抱え続けた。