その人はただ昼寝をしていただけだったらしく、ふぁー。と気の抜けるような欠伸(あくび)をするとムクリと立ち上がった。

「誰だよ人の昼寝邪魔する奴は……ん?あっ、鴨居くんじゃん。」

作業服にボサボサの頭、あの人とそっくりな顔とふてぶてしい態度。

「い、樹くん!?」

それは杉宮の弟の樹だった。

なんでも仕事の合間によくここに来て休憩しているのだとか。

「久しぶりだね。で、こんな所で何してんの?」

「いや、それこっちの台詞なんだけど。」

なんだか杉宮と話している様で、ほんの少しだけ嬉しかった。

「俺は昼寝。で、鴨居くんは何してんのさ。」

腐っても鴨居は樹よりも年上なわけで、仕事を探していて煮詰まってきたから散歩をしている。だなんて言いにくかったのだが、なんだか樹なら打開策をくれるような気がして話して聞かせた。






「へぇー。なんか兄貴といい鴨居くんといい面白いことになってんね。ま、つまりアレでしょ?今すぐに入れて毎日馬車馬の様に死ぬほど働かせてくれる所を探してんだよね。」

「何か気になる表現はあったけど、そういうことなんだ。」


樹は表情を変えず、真剣に考えているのかどうか分からない。

「あるよ、今すぐに入れる所。」

にこっと、怖いくらいの笑顔で言う樹。

思いがけない言葉に鴨居の胸がはずむ。

「それ本当?樹くん。」

「うん、じゃあ行こうか。」

そう言うと樹は鴨居が逃げられない様にしっかりと手を掴むと、引きずる様にしてある場所へと連れていった。