次の日の朝。
あまりよく眠れなかった鴨居は、日が昇るのと同時に目を覚ました。
「メグ……今日は会わせてもらえるのかな。」
タオルケットを畳んでソファーの上に丁寧に置く。
そしてタオルケットの隣に腰を下ろすと鴨居はしばらくの間ぼーっと過ごした。
『ガチャ』と言う音がしてリビングに入ってきたのは養母だった。
鴨居が「おはようございます」と挨拶したのだが、養母は無反応でキッチンへと入っていく。
分かり切っていた反応にも鴨居の心は痛んだ。
無言の空間に包丁独特の軽快なリズムだけが響く。
何だか実家に戻ったような感覚になって、鴨居は何気なく聞いてみる。
「メグちゃんは何が好きなんですか?」
「…………。」
やはり無言。
仕方ないか。と鴨居が俯いた時だった。
「分からないのよね。あの子ったら私の作った料理なら何でも美味しいよ。って言うんだもの。」
メグがそう言う訳を、今になって鴨居はわかるような気がした。
それは一緒にいるのが、料理を作ってもらえるのが当たり前だった頃にはなかなか実感できない感覚。
「何となくだけどそれ分かりますよ。バリエーションは少なくても、味がそんなに良く無くっても……美味しいんです。」
養母はそんな鴨居の言葉に料理を続けながらも耳を傾けていた。
「一人暮らしをするようになってみて、自分で料理したりするじゃないですか。そうするとね、それまで気付かなかった大変さが分かってきて、何でかな?あれだけ嫌だった母親の手料理が食べたくなるんですよ。」
ふつふつと沸きだした湯。
養母はマグカップを取るとミルクティをいれる。
「母親の手料理って、きっと母親が自分の為に作ってくれた。たったそれだけでもう何よりも美味しいんですよ。」
そう言った鴨居の視界が、甘い香りの湯気で霞む。
「……え?」
置かれたマグカップに驚く鴨居。
「ミルクティ。あの子が眠れない時とかによく入れてあげたわ。そうすると嘘みたいにぐっすり眠るのよ。」
養母の顔が鴨居の前で初めて和らいだ。
あまりよく眠れなかった鴨居は、日が昇るのと同時に目を覚ました。
「メグ……今日は会わせてもらえるのかな。」
タオルケットを畳んでソファーの上に丁寧に置く。
そしてタオルケットの隣に腰を下ろすと鴨居はしばらくの間ぼーっと過ごした。
『ガチャ』と言う音がしてリビングに入ってきたのは養母だった。
鴨居が「おはようございます」と挨拶したのだが、養母は無反応でキッチンへと入っていく。
分かり切っていた反応にも鴨居の心は痛んだ。
無言の空間に包丁独特の軽快なリズムだけが響く。
何だか実家に戻ったような感覚になって、鴨居は何気なく聞いてみる。
「メグちゃんは何が好きなんですか?」
「…………。」
やはり無言。
仕方ないか。と鴨居が俯いた時だった。
「分からないのよね。あの子ったら私の作った料理なら何でも美味しいよ。って言うんだもの。」
メグがそう言う訳を、今になって鴨居はわかるような気がした。
それは一緒にいるのが、料理を作ってもらえるのが当たり前だった頃にはなかなか実感できない感覚。
「何となくだけどそれ分かりますよ。バリエーションは少なくても、味がそんなに良く無くっても……美味しいんです。」
養母はそんな鴨居の言葉に料理を続けながらも耳を傾けていた。
「一人暮らしをするようになってみて、自分で料理したりするじゃないですか。そうするとね、それまで気付かなかった大変さが分かってきて、何でかな?あれだけ嫌だった母親の手料理が食べたくなるんですよ。」
ふつふつと沸きだした湯。
養母はマグカップを取るとミルクティをいれる。
「母親の手料理って、きっと母親が自分の為に作ってくれた。たったそれだけでもう何よりも美味しいんですよ。」
そう言った鴨居の視界が、甘い香りの湯気で霞む。
「……え?」
置かれたマグカップに驚く鴨居。
「ミルクティ。あの子が眠れない時とかによく入れてあげたわ。そうすると嘘みたいにぐっすり眠るのよ。」
養母の顔が鴨居の前で初めて和らいだ。



