放浪カモメ

「おや早かったね。あれだけ濡れたら寒かっただろう?さぁお茶でも飲みなさい。」

リビングへと戻った鴨居に養父は熱々のお茶を出してくれた。

そしてゆっくりとソファーに座る。

「で、何でまたずぶ濡れになって、あんな所に座り込んでいたんだい?」

鴨居は見ず知らずの男にも関わらず、養父は優しく聞く。

鴨居は包み隠さずに全て打ち明けることにした。

「オレの名前は鴨居友徳と言います。」

謎の訪問者の正体に養父は驚愕したが、口を挟むことなく鴨居の話を聞いている。

鴨居はメグに出会った経緯や、青森県でのこと、千葉で少しだけ同棲をしていたこと、そしてメグに会うために大阪まで来たこと、全てを話した。

「そうか……キミがあのカモ君だったのか。」

初めのうちは、驚きを隠せずにいた養父だったが、鴨居の話を聞くうちに、その真剣な態度を見るうちに、鴨居の印象が変わっていった。

「メグはあまり私達に話をしてくれることはないんだが、君の話だけは楽しそうに話して聞かせてくれたよ。」

この養父の柔らかな態度に鴨居は驚いていた。

なぜなら先程の養母の様な反応がどう考えても普通だったからだ。

「カモ君。あの子はどんな風に旅をして、何を感じていたのか、一番近くで見ていた君の言葉で私に教えてはくれないか?」

予期せぬ頼みに、驚きはしたが鴨居は自分でも驚くくらいにすんなりと受け入れることができた。

「はい。あくまでオレの感じたままですけど。」

こくりと頷いた養父。

鴨居は記憶をさかのぼる様にして話し始めた。