放浪カモメ

その日の深夜になりメグの養父は帰宅した。

会社を出て迎えに来ていたタクシーに乗り込む僅かな間に濡れてしまったスーツの肩を手で払った。

そして、いつも通りに門の鍵を開けようとした時だった。

インターホンの下に一人の青年がいることに気が付いた。

「キミこんな所でどうしたんだ、びしょ濡れじゃないか。」

カバンからタオルを取り出すと鴨居の頭を拭う。

「とにかく家に入りなさい。そのままでは風邪を引いてしまう。」

そう言って抱え起こしてくれたのだが、鴨居はその言葉に甘える資格が無かった。

「あの、オレは……」

自分は、あなたの娘を苦しめている男だ。と伝えようとするが、それは養父の言葉に遮られる。

「今はとにかく入りなさい。話は後でゆっくりと聞かせてもらうから。」

言う機械を失ってしまった鴨居は養父に引っ張られるがままに、家へと入っていく。

そしてシャワーを借りて、少しぶかぶかな養父の服を着させてもらった。