「やっぱり。鴨居さん、この写真を見てください。」

前園がその二枚の写真を鴨居に渡した。

そこに写っていた少女を見て鴨居は驚愕した。

「その子は真理恵と言って、両親に捨てられてこの青空の家に来ました。」

幼いので顔立ちが若干違っていたが、そこに写っていた孤独を抱えた瞳の少女は紛れもなくメグである。

「自分を捨てた両親をひどく恨んでいた彼女は、きちんと認識していたにも関わらず、自分の名前を消して真理恵だとは言いませんでした。」

鴨居は喜びと驚きとで全身が震えている。

「職員達は辛抱強く、あなたの名前は真理恵だよ。と教えましたが彼女は一向に認めず、自分のことを頑なにメグ、と言いました。」

前園の話に鴨居はもう確信を以外の何も感じない。

「それでメグの引き取られた言えというのは?」

鴨居の質問に、前園はしばらく口を閉ざしてしまった。

必死に少女を探すこの青年に、少女の引き取られた家族について教えたいのは山々だが、それは無闇に公表してはいけない情報なのである。

前園は自分の中で葛藤した。

そして――

「……鴨居さん。残念ですが私はこの施設の代表者として、プライベートに関わるその質問に答えることはできません。」

前園の言葉に、鴨居は怒りや疑問を抱くことすらできなかった。

ただ信じられなくて、頭が真っ白になっていく。

「ですが……前園 元という一人の男として、いや人間として答えずにはいられないのです。ですからこれだけは約束してください。」

みるみる生気の戻る鴨居の瞳。

きらきらと輝くその瞳に前園は、立場を捨て一人の人間として心折れずにはいられなかったのだ。