五日目の朝は真っ黒な雲が空全体を覆い尽くしている嫌な天気となる。

いつ降り出してもおかしくない為、鴨居は傘を持ってでかけた。

そして十二件目の施設を訪れる。

「すみません、お聞きしたいことがあるんですが。」

「はい。何でしょうか?」

話を聞いてくれたのは若い男性で、胸には手書きの名札にひらがなで「おち まさひろ」と書かれていた。

「メグと言うこの写真の子を捜しているんですけど何かわかりませんか?」

越智(おち)は突然の人探しの訪問者に少し驚いていたが、にこりと笑う。

「僕は去年からここで働かせて頂いているので、園長先生に話を通しますのでこちらへどうぞ。」

通された部屋に着くまでに、何人かの子供とすれ違った。

子供達はみんな越智のことが大好きな様で、足にしがみついたり、腕を引っ張って「遊ぼうよ」と甘えたり。

それを見ただけで、ここが凄く素敵な家に見えた。

「初めまして、青空の家の園長をしている前園(まえぞの)と言います。越智くんから事情は聞きましたが、うちにメグと言う女の子は居ませんでした。」

前園の丁寧な言葉が胸に突き刺さる。

ほんの少しだけ、励ましの言葉を受け取って、鴨居が帰ろうとした時だった。

『パタパタパタ……』とスリッパの音がしたと思ったら、園長の前園のよりも年配の女性が部屋にあわてて入ってきた。

「園長先生。あの、うろ覚えなので言いにくいのですが、もしかしたらあの真理恵ちゃんのことなんじゃないでしょうか?」

その言葉に前園は首をかしげたが、すぐに何かを思い出したかのように目を見開いた。

「真理恵。そうか、もしかしたらそうかもしれない。すぐに残っている真理恵の写真を持ってきてください。」

「は、はい。」

また『パタパタ』と音を立てながら部屋を出ていく女性。

鴨居は二人の言っている「真理恵」という少女に何の覚えもなく、何故待たされているのか分からなかった。

すると三分ほどたって、あの女性が二枚の写真を持って再び部屋に戻ってくる。