「杉宮先輩って悠美さんの前ではどんな感じだったんですか?」

鴨居の質問に悠美は天井を見上げ、思い出を振り返っていく。

「特にどんな感じっていうのは無かったかな。たぶんやけど鴨居くんといる時と一緒やったんやないかな。」

それから、悠美は何でもない杉宮との思い出を鴨居に話して聞かせた。

その中で分かったのは、杉宮は恋人の前だろうと誰の前だろうと、屈託がなく飄々としていて、誰からも信頼されていた。ということだった。

「杉宮先輩が学校を突然辞めたんです。先生は実家を継ぐ為だって言ってたんですけど、オレには納得できなくて。本当なんですか?」

杉宮の退学について聞くと悠美はぼろぼろと涙を零して話せなくなってしまった。

そこで、いつの間にか生き返っていた悠太が代わりに話し始める。

「要くんは実家を救うために、おっきな会社の令嬢と結婚すんねん。」

初めて知る杉宮の現状に鴨居はただ驚いていた。

「杉宮先輩はそれに納得したんですか?悠美さんがいるのに、あんなに好きだって言ってたのに。」

悠美のことを自分のことの様に悔しがって、心から怒っている鴨居を見て悠太は微笑んだ。

「要くんは何をしてでも、何を捨ててでも実家を守らなくちゃいけない訳があったから。」

「実家を守らなくちゃいけない訳?」

悠太はゆっくりと頷くと、ほんの少し間を置いて、杉宮の兄、静について話し始めた。