鴨居は電話だという事も忘れてひたすらに話をした。

話し終えた瞬間の清々しさに鴨居はわずかばかり満足してしまっていた。

それを悟ってか悟らずかは分からないが杉宮は冷静に言う。

「で、カモはどうしたいの?別にオレに話すのが目的じゃないだろ。お前は今なにをしたいんだ?」

杉宮の言葉に鴨居は我に返る。

「オレは……オレはメグに会いたい。」

力強い鴨居の言葉に杉宮は少しだけ嬉しくなった。

「そっか。見つけたんだな、本当に好きな人を。守りたいんだな?その子のこと。」

鴨居は「はい」と力強い返事とともに頷いた。

「大阪にいる俺の知り合いに話をしとくから、とりあえずそこに行ってみろ。」

伝えられた連絡先に鴨居はどこか見覚えがあるような気がしたが、思いだせそうになかったので今は気に留めないことにした。

「ありがとう先輩。」

込み上げる気持ちを表すことができる唯一の言葉に鴨居はすべての思いを込め言った。

そして杉宮も最後に、自分自身への後悔や、鴨居への期待も全てをこめて言うのだった。

「ああ。頑張れよ、カモ。」


それからずっと杉宮との連絡が繋がることはなかった。

この後、鴨居と杉宮が再会する時には全てが変わっていた。

そう、全てが変わっていたのだった。