会いたい。会いたい。会いたい――

今はただあなたに会いたい。

そう願うのすら虚しくて。
きっと私はその人を忘れる為のカウントダウンを始めてしまったのだろう。





その週末は行夫も幸子も会社を休み、メグの為に一日を割いてくれた。

だけどメグにしても両親にしても、家族でゆっくりと過ごすのは初めてに近くて、何をしていいのかもわからぬままにその日を終えた。

思い出さぬ様する度に鴨居の笑顔が、声が頭の中を巡っていった。

思い出すな。思い出すな。思い出すな。

そう言い聞かせる度、自分の中に鴨居が色濃く刻まれていくのを、メグはどこかうれしくも感じてしまっていた。

「パパ、ママ。今日は私のために仕事を休んでくれてありがとう。嬉しかったよ。」

メグは思ってもいないことが自分の口からスラスラと出てくることに少しだけ驚いた。

「家族のために休暇を使うのなんて当たり前でしょ。またメグが遊びたくなったらいつでも付き合うからね。」

顔色を窺(うかが)っているような笑顔にメグは虚しさすら覚える。

ここが自分の居場所ではないことは分かっていたが、本当の居場所を見つけてしまうと、こうも心地の悪いものなのかと驚きさえしたのだった。