次の朝。

温かい朝食に暖かで和やかな食卓がメグを待っていた。

「メグおはよう。昨夜はよく眠れたかい?」

コーヒーを片手に行夫はそうにこやかに挨拶をした。

「うん、よく眠れたよパパ。」

昨夜の喧嘩を思い出すとメグはそんな見え見えの和やかさに吐き気がした。

それを決して悟られないようにメグは笑顔で返すと席に座った。

「メグおはよう。バタートーストとフレンチトーストどっちが良い?」

カウンターキッチンから顔をのぞかせた幸子がメグに聞く。

メグはあからさまな作り笑顔をしてフレンチトーストを頼む。

しばらくして出てきた暖かいフレンチトースト。

朝とは思えないような豪華な料理が食卓をかざっていく。

「今日はメグが無事に帰ってきてくれたお祝いよ。好きなだけ食べてね。」

六品もの料理を並べ終えると幸子も席に座り、箸をすすめていく。

暖かいご飯が何故だか温度を持たないようにメグには感じていた。

「あのねママとパパに言いたいことがあるんだ。」

改まってそう切り出したメグ。

二人は不思議そうに顔を見合わせてメグの話を聞いた。

「私、千葉に行って好きな人と一緒に暮らしたいんだ。」

突然の話に、幸子は思わず箸を落としてしまう。

そして動揺を押さえ込み、行夫はメグに言う。

「バカなことを言うな。真理恵お前はまだ高校生の女の子なんだぞ?そんな旅で出会ったばかりの男のところになんて行かせられるわけがないだろう。」

分かり切っていた反応にメグは苦笑いがこぼれた。

「何それ。まるで父親みたいな言い方するんだね。」

「何を言っているんだ?」

メグは今まで押さえ込んでいたものが自分の意志とは関係なく、とめどなく溢れだしてくるのを必死で押さえようとしていた。

しかし思いは幾つもの音になり、言葉として溢れだしていく。