次の日の朝。

ソガはパンク修理キットを鴨居に少し分けてくれた。

そして「気張れや」と一言だけ言って、また加減の知らない強さで鴨居の背中を叩くと、豪快に笑いながら遠く正反対に向かい去っていった。





鴨居はまた自転車をこぎだす。

不思議とペダルが軽くなっているのは気のせいではないようで、パンク修理と一緒に自転車のメンテナンスを習ったからだった。

「僕が思っているほど遠くじゃない……か。どういう意味だったんだろ?」

道も分からず北へと進む鴨居。

しかし何かに導かれるかのように鴨居のペダルは迷うことなく一歩、また一歩と進んでいくのだった。