高層ビルが立ち並ぶ、一角にそのビデオ屋はある。

そこは第二、四週の水曜日が全作100円均一になることで、有名で。

他にも『レディースデイ』やら『キッズデイ』やら……もうそれってサービスなの?と疑いたくなるような『誰でもデイ』なんてものまであった。


鴨居はメモ帳の指示通りにまず二階へと向かう。

二階に上がり目に入ったのは洋画の名作で、見渡すかぎりに海外の作品が陳列されているコーナーだった。

米、英、中など有名どころは完全に無視した鴨居は、その階の一番端、韓国の作品が並んだエリアへと向かう。


「えっと…テ・ヨンギュン主演の梅雨のドナタ?」

鴨居は生まれて初めて"二度見"という行為をしてしまった。


「……バッタもん?何このあからさまなパクり。あ、ジャンルがコメディーだ……パロディーってやつなのかな?」

そんな疑問だらけな作品を、鴨居にしては意外にも乱暴にカゴに投げ込む。

どうやら鴨居は、パロディーにされてしまったオリジナル作品のファンだったらしい。

メモに書かれた他の作品もどうやら、有名作品を真似たコメディーの様で、なかば呆れながら鴨居は全てのビデオをカゴに文字通り放り投げた。

「にしても先生まだ若いのに韓流か……ってイカンイカン、偏見はダメだぞオレ。」

鴨居が何気なくメモの裏を見ると、消しゴムで消されてはいたが何か書かれていた跡があったことに気付く。

はっきりと読むことは出来なかったが、とても有名な邦画の作品だったので、容易に推測することが出来た。

「これって……」