「……ふーん。なるほどね、オレが居ない間に楽しそうなことになってんじゃんか。」
いつも通りに枝豆と焼き鳥をツマミに二人はビールを楽しむ。
ただ、どうやら杉宮にとっては鴨居の話が一番のツマミらしかった。
「楽しいことなんて一つも無いです……オレは何もしてないのに二人はどんどん離れていっちゃって。」
元来。杉宮は他人の愚痴を聞くような性格はしていない。
しかし今、鴨居の不安そうな顔をみながら、珍しく不満を口にする鴨居を見て少し嬉しそうにしていた。
鴨居の愚痴が続く中、杉宮は静かに一言、話を区切った。
「……なんか嬉しいな。」
「えっ……?」
杉宮の意外な言葉に鴨居は目を丸くする。
「ん?あぁ、いや。カモがやっとオレを頼るようになったんだなぁ……って思ってさ。」
そう言われた鴨居も少し嬉しくなった。
「そんなことより。カモはさ先生の言った『普通に』を勘違いしてるよ。」
外は夏の夕方だと言うのに風がとても強かった。
地面に置かれている、そこら中の看板が音をたてながら揺れている。
「どういうことですか?」



